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2007-10-10

今月の映画 「インベーション」



ワシントンの精神科医キャロルは得体の知れない不安に襲われていた。それは、ある日を境に、まわりの人間が別人になっているのではないかという恐怖。外見は何ひとつ変わらない。しかし、そこにいるのは、自分がよく知る夫でもなければ、友人でもない。感情を持たない不気味な誰か。

やがて、不安は現実のものとなり、街中から人間のあらゆる感情が消えていく。前だけを見て歩く無表情な人の群れ。そこには怒りも憎しみもない代わりに、哀れみも愛もない。友人の医師ベンが突き止めたのは、その変化は睡眠時に引き起こされるという事実。人の心を保ち続けるには、永遠に眠らずにいるしかない……。

オフィスの同僚、道行く人々、隣人、そして愛すべき家族。周囲の人間が次々に眠りに落ちていく中、変わってしまう恐怖より、変わらずにいることのほうが恐ろしくなっていく極限状態――。それでも、彼女はたった一人で戦うことを決意する。なぜなら、感情を奪われてしまったら、もう二度と息子を愛せなくなるから。それは母親が母親でいるための壮絶な覚悟――誰も信じない、感情を見せない、そして絶対に眠らない。まわり中すべてを感情のない人々に取り囲まれ、ジリジリと追い詰められていく戦慄の中、彼女はかけがえのないもののために立ち上がる。



ますます美しさを増したニコール・キッドマンの強い母親ぶりと冷静さがかっこいい。
彼女のような美貌と知性を兼ね備えた女性ならば、ダニエル・クレイグ演じるベンが「お友達」として甘んじてしまっているのも、十分理解できる。

いやあれは、女がその気にならない限り、永遠に口説けはしないだろう。


だいたい「眠気」という生理的な現象に精神力で勝てる人間がいったいどのくらいいるというのだろう。
それだけでも、並々ならぬ強さを持った女性だとわかる。
ある意味理想的な強く美しい女性であり母親。



けれども、眠ってはいけないというサスペンスの中で、息子への狂信的な愛情と、それに対比して浮き彫りになる元夫への冷たさには、正直「?」な気持ちが否めない。
確かに何者かにのっとられた元夫の得体の知れなさは恐怖だが、その中でも語られる彼の思い出話が本当だとしたら、それは少し残酷すぎる話ではないだろうか。

そしてその寂しさの隙間に何者かがのっとったとしたら。

ベンの心の隙間にもそんな闇があったとしたら。



ラストシーンに垣間見ることができる、形のない不気味さ。
一度「他人」になった愛する人を、その後も信じることができるのだろうか。

「他人」を実感したからこそ、あえて彼女はベンとの一歩を踏み出した、そんな風にも思えてならない。

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2007-10-07

鉄道映画祭 「ライフ・イズ・ミラクル」


鉄道映画祭


1992年、国境近くのボスニアの村で暮らすルカは、鉄道建設のために働くセルビア人技師。ある日、息子のミロシュが兵役へ行くことになり、妻は、ミロシュの壮行会で出会ったミュージシャンと駆け落ちしてしまう。
10年ぶりに一人暮らしを楽しむルカに、やがて、ミロシュが敵の捕虜になった知らせが届く。気が気でないルカに、村の悪戯者トモが、ムスリム人看護婦サハーバを連れてきて、ミロシュとの人質交換に使うよう仕向けるが、一緒に暮らすうちにお互い惹かれあうようになってしまい。。。。


戦争の中、捕虜と恋に落ちる。
そんなあらすじから、もっとおとぎ話だと思っていたら、妙にせつなく、滑稽で一生懸命な映画だった。


息子への愛情いっぱいなのに言葉の通じないミュージシャンと駆け落ちしてしまったり、サッカー選手になれる瀬戸際で兵役にとられてヤケになったり、田舎暮らしがつまらなくてピストルで肝試しをしてみたり。
部屋に巨大な鉄道模型を作ったり、線路際に植える木の種類を真剣に検討してみたり。
そうかと思えば熊に襲われて死人が出たり、暗殺者が暗躍したり、戦争の隙間で金儲けを目論んでみたり。


誰しもそれなりに怠惰に一生懸命生きていて、色々なものを抱えてはいてもそれなりには幸せだったりする。
なにも起こらなければたぶんそのままなにも知らず、疑問も感じずに生きていけたものを、戦争が起こってしまったがために全てのものが変化してしまうそのせつなさ。見たくなかった自分や知りたくなかったことが、どんどんとあふれ出してくる。
躍動する音楽にのって、巻き込まれる人々のどうしようもなさと非日常ぶりと、恋をするロバ、人の家に住み着く人食い熊、図々しい猫などの逞しい動物達の対比。


幼なじみの大尉はルカにいう。

「これは自分たちの戦争じゃない」

そう、彼らは巻き込まれただけ。
そして会うはずのなかった人に、出来事に出会っただけなのだ。


ルカにとってサハーバとの恋は、本当に真剣なものだったのは間違いないだろう。
けれども、彼女と生きていきたいと命をかけて必死になったのも、戦争の中だったからできたかもしれないのだ。

自殺することにも失敗したルカは、戻ってきた家族と共に前となにもなかったようにまた生きていくに違いない。




「ライフ・イズ・ビューティフル」は”人生は素晴らしい”という意味だと思っていた。
けれども見終わった今は思う。


たぶん、”生きていることはそれだけで素晴らしい”という意味なのだと。
それが、人生なんていったら、年寄りのセリフみたいだけどね。(笑)

2007-10-04

今月の映画 「クワイエットルームにようこそ」


映画 クワイエットルームにようこそ01

映画 クワイエットルームにようこそ02

佐倉明日香、28才、バツイチ。職業フリーライター。締め切りに追われ、仕事に行き詰まる毎日。同棲相手とも、すれ違いの微妙な状態。そんなある日、目が醒めると、見知らぬ白い部屋にいた。そこは“クワイエットルーム”と呼ばれる精神科の閉鎖病棟だった。。。。。



時代の寵児、松尾スズキの長編監督第二作(らしい)。
実は私はこの人の作品は文章、映像、舞台を問わず触れたことがない。前評判だけで「今風のなんとなく系かしらん」くらいの感覚でいたところ、いきなり舞台は精神科だわ、出てくる人間人間が壊れきってるわ、と目がテン、の連続。
その勢いとつかみだけでも、確かにタダ者ではない感、濃厚。


ギャグ満載で、こんなことあり得ないよ、と思いつつも、どこか胸に突き刺さるのは何故だろう。
たぶん、どれだけ精神を病んでいる人もどこか暖かくて、どれだけまともな人間であっても、なにかきっかけさえあれば簡単に”あっち側”に行ってしまうことを誰もが知っているからだろう。




なんとなくお久しぶりの内田有紀の体当たりの演技がとてもいい。彼女以外が演じたらヒロイン明日香は随分違ってきてしまっただろうと思う。
ワキ役陣も売れっ子脚本家役で「実生活と違わないんじゃないの」くらいの勢いの宮藤官九郎やステンレス看護婦のりょう、濃いメイクがi意外と似合う蒼井優やら一本まゆげの妻夫木聡と若手もぬかりなく芸達者を揃え、あり得ない世界を作り出すための(壊れっぷりの)メンバーに過不足無し。
特に過食症のおばちゃんを演じた大竹しのぶ。彼女の天才ぶりが遺憾なく発揮され、いやらしさ爆発、憎々しさ120%の人間像。弱い人間というものが、どれだけ見ていて苦しいものかをくっきりと描き出している。
実際に目の前で明日香と同じ事をやられたら、私だってつかみかかってしまうと思うものね。いやはや才能って怖いものです(笑)

平岩紙の看護婦さんも相変わらずかわいく変だし、それ以外のちょい役でさえ庵野秀明監督だのしりあがり寿だの、塚本晋也監督だの、俵万智だののゴージャスさ。庵野監督を見た瞬間に「おおっ、カントクくんだ!!」と心の中で叫んでしまったのは、私だけでしょうか(笑)?



連絡先を書こうとした明日香に、彼女は言う。
「いいの、どうせここ出たら捨てちゃうから。そういうものよ。」

そして、色紙の最後に書かれていた言葉。

それが得難い出会いであっても、そして心を通わせたとしても、戻ってきてはならない場所。
それが精神病棟という悲しい場所の宿命なのだ。


「こんなに人がいるのに、こんなにひとりっぼっちの場所ってないよ」




やっと現実の自分と向き合った明日香は、まだ人生に向き合うスタートラインに立ったばかり。もしかしたら、戻ってきた彼女のように、また同じ事を繰り返すのかも知れない。

けれども、色紙や似顔絵をゴミ箱に入れたときのせつなさを思い出せば、きっとまた進んでいけるに違いない。

プロフィール

hijiri

Author:hijiri
長年のITまみれな生活を経て、着物と煙管、和文化と美しいもの、酒と美食(B級)をこよなく愛する生活。
■日本の文化と”今”をつなぐ再実感マガジンJapaaanでライターやってます。
http://mag.japaaan.com/
■cafeglobe読者エディター、やらせて頂いてます。
http://www.cafeglobe.com/2013/06/030174cafeglobe_readers.html
■ミラーサイトはこちら http://ameblo.jp/hijiri-info

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