--------

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2011-10-25

今月の映画 「ハラがコレなんで」


着物もドレスも、ジーンズも。

この世で一番大事なことは、「粋」に生きること。失くしちゃいけないのは、「義理と人情」。それが原光子の生き方だ。妊娠9ヶ月でお腹の子供の父親とは別れ、金もなければ家もない。そんな限界でも、光子はどーんと構えていた。流れる雲を追いかけて、子供の頃に暮らした長屋にたどり着く光子。時が止まったままの長屋には、優しすぎて不器用にしか生きられない人々が肩を落として生きていた。
「OK、大丈夫。私がなんとかする!」誰よりも困っているはずの光子が立ち上がる。


底抜けのコメディ映画かと思ったら、むしろ空気感は重い。
いや、けして暗いわけではない。
むしろ笑える映画であることもコメディであることも確かなのだが、それだけではなく
現代が持つ様々な悩みや影の面をたくみに散りばめてあるからだ。

笑いながらも目だけ真剣になってしまうような。


妊娠9か月の光子。子どもの父親は行方知れず、お金もなく行くあてもない。
彼女は「粋」な人生が最良と思っており、そのずれた価値観のせいで
はたから見れば完全な負け組人生を送っている。
そして光子とはまた違う方向での”過去の遺物”が消息する長屋とその住人たち。
彼らの生活もけして幸せそうには(一見)見えない。
どこもかしこもため息が蔓延しているように(一見)見える。

でも、彼らはどんどん幸せになっていく。(ように見える)
いっそすがすがしいほどに。



様々な情報と状況に囲まれている今は、
正直他人のことになんてかまっていられないという人の方が圧倒的に多いはずだ。
誰かの役に立ちたいという気持ちはあっても「まずは自分」、
だって余裕のない時にそんなこと考えられない。
なにかを受け取ったら返せばいい。それでも充分思いは伝わる。
だってそうしたいという気持ちはちゃんとあるんだもの。

それがたぶん今の割と平均的な価値観だと思うし、
個人的には特に間違ってもいないと思っている。


この映画で描かれる昔ながらの助け合いの長屋というのは、
これとは逆に壮大な「甘え」の上に成立しているように思う。
自分にかえってくることを信じきっているからそもそも得かどうかなど考えない。
だからまずは相手を甘えさせることに疑問もない。
その分相手に甘えるときにも遠慮がない。
自分が見捨てられるなどということが、そもそも考えに入っていないのだ。

だって一人じゃないんだもの。
たぶんこれがそういう人々の基本の考え方、なのだ。

表面だけみると理想的で単純にうらやましくなるのだが、
これは全員が平等にこのスタンスと余裕を持っていないと成立しない話だ。
いろいろな変化を経た今、たぶん昔は圧倒的多数だっただろうこの価値観の人々は
結果的に変わらないことで時間の流れの中に取り残され、
孤独死や閑古鳥のなくお店やリストラなどの問題に直面してしまっている。
それがこの作品に散りばめられた「現代」であり、作品の根底に流れる「闇」であり
笑っている最中にも心を掠めて、かすかな傷みを残していく。

誰もが気づいていて気づかないふりをしているものを、きっと思い出させてしまうのだろう。


とにかく仲里依紗の機械的な演技(褒めてます)がいい。
この人、役柄によってまったく印象が変わるのだが、
今回は旧い価値観をインプットされてしまったが故の悲喜劇ともいえるヒロインを
非常に四角四面に演じている。(褒めてます)
こういうキャラクターというのは大体の場合狂言回しにしかならず、
よっぽどの力量がなければ主軸のテーマを体現するタイトルロールは張れないものだが、
見事にスクリーンを自分色に染めることに成功しているのはこのカチカチに緻密な演技あればこそ。
どちらかというと感覚的な女優さんのようなのだが、
ゼブラークイーン(あれ?レディだっけ?)の突き抜けた演技といい、
この正確無比な力量恐るべし。

相手役(?)の中村蒼もこれまでで一番いい(というかはまっている)し、
その叔父を演じる石橋凌も可笑しみとマジメさをない交ぜにしたさすがの存在感を放っている。
そのほか脇を固める役者陣もこう来たか!という布陣だし
妙な存在感を放つふてぶてしささえ感じられる子役二人もいい。(褒めてます)



信じることをベーシックなコンセンサスとしては放棄してしまった世界、
それが現代の偽わざる姿であることは、きっと多かれ少なかれ皆が持っている感覚ではないだろうか。
それを鮮やかに、迷惑なほどにぎやかに、そしてどたばたと変えていく光子。

光子がいない私たちはさてどうしたらよいのか。


好みのわかれる映画だと思うが、個人的にはかなり拾いものだったと思う。
見終わった後のすがすがしさともどかしさ、それがたぶん一番の贈り物なのだろうから。



スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

hijiri

Author:hijiri
長年のITまみれな生活を経て、着物と煙管、和文化と美しいもの、酒と美食(B級)をこよなく愛する生活。
■日本の文化と”今”をつなぐ再実感マガジンJapaaanでライターやってます。
http://mag.japaaan.com/
■cafeglobe読者エディター、やらせて頂いてます。
http://www.cafeglobe.com/2013/06/030174cafeglobe_readers.html
■ミラーサイトはこちら http://ameblo.jp/hijiri-info

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。