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2012-12-04

今月の映画 「マリー・アントワネットに別れをつげて」


1789年のフランス。王侯貴族を打倒しようとする革命勢力の勝利は目前で、
王妃マリー・アントワネットの名もギロチンのリストにあった。
アントワネットに心酔する朗読係のシドニーは王妃に忠誠を誓うが、
アントワネットは愛するポリニャック夫人の身代わりになるようシドニーに命令を下す。




バスチーユが陥落した7月14日からのたった三日間の物語。


ベルサイユやアントワネットというと、
日本ではやっぱり「ベルサイユの薔薇」のイメージが強いのではないかと思う。
りりしい男装の麗人ときらびやかな宮殿、可憐なフランス王妃と異国の貴族との秘められた恋。


アントワネットの朗読係として仕えるシドニーの視点で描かれるこの作品は、
それとは異なり、一見華やかな宮殿の裏側でうごめく人々をあからさまに描く。
王妃の寵愛するポリニャック夫人に対しての噂話、当時の使用人たちの質素な生活、
思いつきで下される貴族たちの要望に振り回される付き人たち。
ぬるま湯に慣れきって、表舞台でなくても宮殿を出ていけない貴族の成れの果ては、
まるでシドニーの腕に群がるノミのようである。


(そして実際のベルサイユは、確かにシドニーが息を切らして駆けつける程広いのだ。
敷地内のトリアノン宮殿まで移動用の乗り物が用意されているくらいである。)



そんな歴史の裏舞台のリアル感と高額なレンタル料のためブノワ・ジャコー監督に
「高級娼婦」とまで言わしめた本物のベルサイユ宮殿の本物の輝きは、
映画に重厚さと独特の空気感を漂わせる。
その分、あっけないラストには拍子抜けだったが、調べてみるとこの作品は原作ありきだったらしい。
そして原作では主人公は50代であるとのこと。


なるほど、少女ではなく、老齢に近づいた女性であれば、少し納得できるような気はしなくもない。



レア・セドゥーはミッションイン・ポッシブルの殺し屋のイメージとは違い
クラッシックな衣装も似合って魅力的。
どこか冷めた視点を持つシドニー役にははまっていたと思う。
またアントワネット役のダイアン・クルーガーは全編見事なフランス語で
こんなに美しかったっけ(失礼)と思うほど高慢で純粋な王妃を魅力的に演じていた。
それに比較するならポリニャック夫人はもう少し華やかな女性であって欲しかったかも。
(ポリニャック婦人は歴史上でも天使のように美しい人だったといわれている美女である)




王妃に心酔するシドニーのいじらしさと危うさ、
美しく奔放な女友達に恋するアントワネットの世間知らずさとイノセントな残酷さと魅力。
そして自分の欲望と役割と引き際を見事に心得ている"悪女”ポリニャック夫人。



バスチーユ陥落という歴史の大事件の裏で、そんな三人が同性愛のごとく描かれる本作。
確かにそういう感情ももあったのかもしれないと思いつつ、
たぶんこれは彼女たちの恋愛話ではなく、
様々に囚われた人々がその枠を取り払われた時に出会う喪失の物語なのだと思う。




映画ではシドニーが少女だったために、妙に老成された振る舞いの違和感と
ラストのあっけなさが相まって消化不良の感が否めなかったが、
彼女がもう老境に差し掛かった年齢であったのならば理解はできる気もする。


ベルサイユ宮殿という特殊で隔離された世界で栄華を極める美しく若い王妃。
彼女の信頼をかの女性のように得れば、孤独と不安からは解放される。
(映画最後にもシドニーが天涯孤独で孤児院出身であるということがさりげなく出てくる。)




たぶん、彼女はポリニャック夫人になりたかった。
身代わりであっても、恋した王妃の願いを叶えるというそのことによって、
それまでの想いが報われると信じたから。


けれども身代わりは身代わりであり、最後までアントワネットは彼女を見ることはなかった。
だからこそ「世界で一番残酷な片思い」


あのラストの笑顔は彼女としては叶うはずの夢が砕け散った瞬間だったのかもしれない。


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プロフィール

hijiri

Author:hijiri
長年のITまみれな生活を経て、着物と煙管、和文化と美しいもの、酒と美食(B級)をこよなく愛する生活。
■日本の文化と”今”をつなぐ再実感マガジンJapaaanでライターやってます。
http://mag.japaaan.com/
■cafeglobe読者エディター、やらせて頂いてます。
http://www.cafeglobe.com/2013/06/030174cafeglobe_readers.html
■ミラーサイトはこちら http://ameblo.jp/hijiri-info

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