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2008-09-05

今月の映画 「おくりびと」





所属していたオーケストラが解散になり、チェリストとしての夢をあきらめた小林大悟。母が残してくれた山形の家に妻と移り住み、第二の人生を始めようとする。
新聞で求人広告を目にし、面接のためNKエージェントを訪れた大悟は、社長の佐々木から驚くような業務内容を告げられる。それは“納棺”、遺体を棺に納める仕事だった。
戸惑いながらも、妻の美香には冠婚葬祭関係=結婚式場の仕事と偽り、納棺師の見習いとして働き出す大悟。美人だと思ったらニューハーフだった青年、幼い娘を残して亡くなった母親、たくさんのキスマークで送り出される大往生のおじいちゃん・・・そんな時、妻から思いもかけないことを言われてしまい。。。。




遺体を棺に納める納棺師という職業があることを初めて知った。
遺体に触るということで最初違和感を覚えたとしても、こんな風に人生の見送られたらきっと幸せだろう、うらやましいと思う。


とにかく、大悟演じる本木雅弘が美しい。格好いいとかハンサムとかでなく、とにかくこの人は綺麗な男性だと改めて思う。
前半かなりコミカルな演技も披露しているのだが、品を失わないというか、人間としての深みと賢さといい意味での弱さで、新人納棺師の大悟を優しく演じている。
加えて、社長佐々木演じる山崎努の圧倒的な存在感。飄々としていてでも暖かく強く、そしてプロの納棺師としてのプライドを余すところ無く身に纏い、老成した人間の儚さまで表現した彼の佐々木像なくして、この映画は成立しなかっただろう。

他にも、吉行和子、笹野高史、余貴美子といった贅沢な脇役陣。(峰岸徹にいたってはセリフの一行もない!)
少々心もとないかと思われた広末涼子も、等身大の女性を無理なく演じ、今までで一番よかったのではないかと思う。



荘厳で厳粛で、暖かいセレモニーを司る納棺師たちの、所作や心構えのなんと美しいことか。
まるで茶道の動きを見ているようである。
けれども、この映画はそんな美しい側面だけでなく、汚く切ない部分もきちんと描く。遺体を触るというイメージだけで「もう少しましな職業につけ」と忌み嫌われ、蝿が集る腐敗した遺体をも差別することは許されない。
嘔吐を堪えながら、忘れられない触感を妻の体をまさぐることで忘れようとする、人間の浅ましさ。そんな大悟とは裏腹に、たとえ死後数週間の腐乱死体であっても、同じように扱い、美しく送り出そうとする佐々木のベテランとしての佇まいの潔さ。

この映画は、自分の仕事にどれだけ誇りを持てるのか、という問いかけでもあるのだろう。
それは、翻ればどれだけ自分を愛せるか、ということなのだ。自分を愛せない人間は、他人も愛せないから。




チェロの調べにのって紡ぎだされる物語は、大悟にとって許しの物語に姿を変える。

自分の思いを託した石を送りあうという「石文(石の手紙}」という考え方がものすごく素敵だった。
石には文字はない。ただその触感や手触りで、相手の気持ちを慮る、想像する。感じる。

相手の思いを感じる。
見えないものを感じ、それを慈しむ。
それが人間の一番の素晴らしさかもしれないから。

まさにそれは、シンプルであっても一番強くこの作品を貫く、大きなメッセージであるに違いない。





モントリオール映画祭でグランプリをとったそうだが、さもありなん。
どんな人にも勧められる、そして見終わった後にきっと誰もが愛する人たちを思い浮かべるだろう。秀逸という言葉が相応しい作品だと、私も思う。




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プロフィール

hijiri

Author:hijiri
長年のITまみれな生活を経て、着物と煙管、和文化と美しいもの、酒と美食(B級)をこよなく愛する生活。
■日本の文化と”今”をつなぐ再実感マガジンJapaaanでライターやってます。
http://mag.japaaan.com/
■cafeglobe読者エディター、やらせて頂いてます。
http://www.cafeglobe.com/2013/06/030174cafeglobe_readers.html
■ミラーサイトはこちら http://ameblo.jp/hijiri-info

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