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2008-09-27

人形の家 @Bunkamuraシアターコクーン


まもなく銀行の頭取に出世しようという弁護士ヘルメルとその妻ノラは、3人の子供と共に、仲むつまじく幸せな生活を送っていた。だがノラには、愛する夫には決して言えない秘密があった。かつて夫が重病に罹ったときに、その治療のため、内緒で夫の友人から借金をし、しかも、その借用証書に、臨終の床にあった父親の署名を捏造していたのだ。それ以来、日々の生活では、借金返済の工面に追われながらも、なんとか平穏に過ごしてきた。
ある日、その借金相手・グロクスタが、夫ヘルメルによって職を追われかけ、秘密の暴露とひきかえにノラに、復職を夫に働きかけるよう迫ってきた。秘密が露見することで、これまでの幸せな家庭が破滅することに恐れ悩むノラ、だが、心の中では、もし夫がこの秘密を知ったとしても、夫は自分への愛のために、必ず自分を擁護してくれるものと強く信じていた。
やがて遂に、夫の手元に、グロクスタから暴露の手紙を届く。そして、ノラは夫の真実の姿と、己がこれから取るべき道を知ることとなる・・・・。




チケットを取ってくれた友人の強運と腕のおかげで、席は舞台からほぼ1m、2mあるかないかの距離。
そんな真近くで、堤真一氏や宮沢りえちゃんが動いたりしゃべったり、挙句に抱き合ったりキスしたりしているわけで(いやあれ、マジでキスしてましたよ、つーかいったい何回キスしてたかわかんないくらいですよあなた!)、「ああ、りえちゃんになって堤さんにおでこにチューして欲しいっ!」とか「りえちゃんの細い腰に腕をまわすのは俺だーっ!」みたいな妄想は、その場にいた成人男女すべての思いであったことは想像に固くない。

魅力的でキュートで綺麗でコケティッシュなノラ、そんな彼女をかわいくてたまらないという表情でニコニコ眺めるヘルメル氏、いや堤さんの表情を見ていると、こっちまで赤面しそうなラブラブさ加減である。
いや、むしろ誰もが欲しくてたまらないとびきりのおもちゃを見つめるような愛でるような、まるで見えない周りに見せびらかすような視線、とでもいおうか。


そして、それがまさにこの演目のテーマでもあったりする。


ノラは確かに愚かな女性である。けれども、ものを知らない無垢な存在であるからこそ、本能的な能力でなにか感じることに長けていることも否めない。
そうであるからこそ、彼女は自分を見失っていてもそれなりに楽しく人に愛される存在として人生を生きてこれた。
もしも彼女がどうしようもない存在だったら、友人のリンデ夫人は彼女のためにあれだけのことをするだろうか?自分の寿命を知ったドクター・ランクがあれだけ彼女に紳士に接することができたのは、一体なぜだろうか。

自我は一度目覚めてしまったら、自分の感情や欲求を無視することは難しい。子供のままでいれば、それが正しいと思い込めれば、一生なににも疑問を感じず幸せに生きていける。
知ってしまったら、知らないときには戻れない。記憶を消すことは不可能と同義だ。


もしかしたら、幸せの妨げになるのは、なにかに対する疑問や不安を知って変わりゆく、自分自身であるのかもしれない。
この作品が語るように、知らないことも、また不幸であるとも言えるのだけど。




ヘンリック・イプセンによって書かれたこの戯曲は、1879年の作というから既に古典に近い。この時代ならではの、淀んだ空気の中で生まれる女性の自立とフェミニズムをどう料理するかと思っていたのだが、どろどろした空気感を微塵も感じさせないまま、休憩を挟んだとはいえ、三時間という長時間、まったく飽きずに圧倒的なパワーで引き込む斬新な演出と主役二人の上品なたたずまいには感動しか覚えなかった。

古典も新作になりうる、としみじみ感じさせてくれた舞台であったと思う。





出て行くノラに、妻として母としての責任はどうするのだと叫ぶヘルメル氏は、結局最後までノラに「愛している」とは言わなかった。
どれだけ「かわいい」と賛美していても。


もし、彼が「愛しているから行かないでくれ」と心から彼女に伝えたとしたら。
もしかしたら奇跡はもう一度起こったのかもしれない、と思うのは私だけだろうか。



人形でいたくないのも女性ならば、愛する人に守られたいと思うのもまた、女なのだから。




シス・カンパニー「人形の家」
http://www.siscompany.com/03produce/20ningyou/index.htm







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プロフィール

hijiri

Author:hijiri
長年のITまみれな生活を経て、着物と煙管、和文化と美しいもの、酒と美食(B級)をこよなく愛する生活。
■日本の文化と”今”をつなぐ再実感マガジンJapaaanでライターやってます。
http://mag.japaaan.com/
■cafeglobe読者エディター、やらせて頂いてます。
http://www.cafeglobe.com/2013/06/030174cafeglobe_readers.html
■ミラーサイトはこちら http://ameblo.jp/hijiri-info

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